AIR-J'史

映画と映画祭と映画館と演劇とじゃがりこと旅行とライブが好きな札幌生まれのAIR-J'の記録

2016年・第62回全国高等学校演劇大会の個人的順位付け

演劇に本格的に出会ったのは2006年の大学1年の時である。と言っても、当時は映画関連のサークルを探してたら愛好会しかなくて"部(サークル)"としてちゃんと活動していたのはその愛好会の付随先となっていた演劇部であったからそこに入部してみただけだった。
1年生時の11月に行われた大学祭の中での2日間の公演に音響で参加して、あともう1回?くらい参加したような気はするが、当時はやはり映画に傾倒していて映画祭の活動(多少は自主映画製作の活動も加わってたかな…)をメインにしたくて翌年以降(はっきりは覚えていない)に退部してしまった。
まあそれ以外の理由として、この時点では部員もそこまで真剣に活動してる人もいなかったし、自分の意に若干そぐわない部分もあるな、と感じていたというのもある。

しかし時が経ち2009年2月、部の先輩に公演の受付手伝いをお願いされ、1日だけではあったがそれに参加した。
そしたら数か月後、その先輩が主宰となり、そこに参加していたメンバー計5人で組んだ劇団の旗揚げ公演(10月)で音響をやらないかと誘われ、それから何回かその劇団で音響で参加し、そしてそこから徐々に演劇関連の繋がりが増え、他でも音響をやったり受付やったりして、更には演劇鑑賞欲も増えたという次第である。

演劇鑑賞履歴で詳しく変遷が辿れます。

大学では学びたいと到底思えない分野の学部に入っていたため、別に大学側は決して悪くなくむしろとても良いところではあったけれど(更に言えば学部の分野も世界的に役立つものなので、それも悪くない)、頑なに拒絶して学内では自ら勝手に孤独を極めていた僕は、たぶんこの先輩を通じて唯一この大学にいたアイデンティティを保っていたと思う。
(後に、同演劇部にいたもう一人の先輩や、演劇部には所属していなかったが同じ大学の卒業生である人に出会うことになる不思議な運命に遭遇する)

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さて、演劇関連の自分史を語ったところで、先日行った『2016ひろしま総文』部門プログラム:演劇の『第62回全国高等学校演劇大会』の感想でも書こうとしよう。どうせなら、久々に個人的ランキングでも付けてみようかな、と。

噂に聞いてた全国高等学校演劇大会を、この目で生で確かめようと旅行がてらに去年初めて行ったわけだが、もう今の生活では全くと言っていいほど触れないし出会わない高校生たちの中に囲まれ、その熱気に感動で震え、開会式で生徒実行委員会委員長の男子がみんなを立たせて挨拶したその威勢の良さにまた感動で泣きそうになり、そして更に各公演の高校生たちが演劇をしている姿にもお世辞でもなんでもなく感動してしまったのである。

そんなわけで今年も全国大会へ行ったのだけれど、個人的都合で3日目の2校の観劇を辞退してしまった。でも感想をtwitter等で読んでると、来年の宮城総文ではまた3日間全て行きたいよな、と思うのであった。はたして行けるのであろうか…。

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APOFESの個人的順位では検索を避けたいがために公演者名を伏せたが、今回はtwitterで全て伏せないで感想を書いちゃってるしRTもいいね!も普段より多くもらってたりするので伏せない。

3日目の2校は観劇していないので個人的順位からは除外し、各所で観た感想やプログラム内容から推測で思う所を書くことにする。

また、公式で発表されている賞の結果とは違うと思うので、あくまでも僕個人の好みとして受けとってほしい。

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1位 静岡県立伊東高等学校『幕が上がらない』
1日目にしてぶっこんでくれた作品。地区大会から既に噂には上がっていたので気になっていたけれど、観て納得。その公演名の通り幕が上がらず、客電も落ちない。幕の前で演じて、そして客席内の至る所で演技をし、更に走り回る。某映画のタイトルをただパロディにしただけではなかった。

2012年に最優秀賞を獲った『もしイタ』で話題になった強豪校・青森中央高校の後のいわゆる午後イチの公演だったが、それすらネタにしていた。自らの高校の自虐ネタが秀逸。
こういうのはどちらかと言えば小劇場で観るような形式だからこんなホールではそぐわないのでは?…と思ったりもしたが、そもそもちゃんと聞いたとしても理解できるかといえばそうでもない台詞の数々に、たぶん「みんなに分かってもらう」というのをハナから捨ててしまってる挑戦的なものなのだろうと感じた。
全体的に可笑しすぎて笑えるけれど、その理解し難いのが長々と続く箇所がいくつかあって、それらを首を様々な方向に回して観なくてはいけない「疲れ」を生じさせることになってしまった。

終わった後のざわざわ感。「頭おかしい」との陰口(ある意味褒め言葉?)のような声。
高校生たちや他の演劇を知らない大人たちにはかなり混乱したかな、と思うが、頭おかしい演劇はもうそこらじゅうに溢れてたりするので、個人的には人を振り回すのは大好物なのでこれを一位にした。こういう「疲れ」は好きではあったりする。

公演後、一緒に観てた知り合いに今年の大会の脚本集をちらっと見せてもらったら脚本には割と忠実だったりした。そう、計算ずく。ずるがしこい高校生たちめ・・・。
これを見て刺激を受けて「高校生じゃあちょっと…」と臆することない青年たちが更なるものを演じようとしてくれればいいなと思う。


2位 佐賀県立佐賀東高等学校『ボクの宿題』
2015年に『ママ』を観てその感動へのもっていき方で会場中が涙していたけれど、今回も同じように会場中をすすり泣きで溢れさせてくれた。
去年も今年も上位校にはなれなかったけれど、かなりの正攻法の演劇をしているという点では素晴らしい高校じゃないかな、と思っている。
しかも今回は序盤は笑いに包み、後半になっていって息子が未来の話を演じる過程で父の人生とオーバーラップして、そして何故母親が出て行っていまったかが明かされるようになる、その展開の自然さは群を抜いて素晴らしいと感じた。

序盤はダンスありで登場人物たちのやり取りがとてもリズミカルで楽しい。そして、父と息子を演じた役者のハマり具合が素敵で、特に息子役を演じた新郷樹くんは昨年の『ママ』でも息子役を演じていて、変わらないショタ感満載の高い声と顔が個人的にもう大好きで、また見られて嬉しかったというのはあった。彼でないと、そして今でないと出来ない役。声変りしたらもう息子役なんて出来なくなっちゃうんだろうな…(余計な心配
去年よりもパワーアップしていて、切なさという点では去年のほうが圧倒的上だけれど、見やすくなってたし、こういう王道も好きだったりはする。


3位 青森県立青森中央高等学校『アメイジング・グレイス
ここは2012年の『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら~』で最優秀賞を受賞したことで記憶している人が多いと思う。素舞台、大人数でSEや歌やらを表現し、そして作品もまた笑いあり涙ありという、"人間がいれば演劇なんてできちゃうんだぜ!"を見事にやってくれたところである。
話題になったことは知っていたがちゃんと観たのはつい最近であり(録画したDVDでだが)、確かに素晴らしいと感じた。

今年もその強みを存分に生かし、"鬼"と"人間"という、桃太郎の話を茶化してみせた作品で差別・歴史・難民等の問題を皮肉たっぷりに演じてくれた。
その強みを知ったせいで、自分としては新鮮味が薄れているというのと、佐賀東は終盤では涙にもっていくときには冗談はもう言わなくなってきていたがここは冗談が最後のほうまで若干続いてしまったので、勿論それは皮肉としての冗談なのだろうけれど根底としてあるテーマがテーマだけに「痛々しい」と笑えなくなってしまって胸が苦しくなったのでこの順位にしたというのはある。
しかしながらこの題材、脚本家が大人だからとはいえ、それをもっと若い高校生が呑み込むにはホント大変だったのだろうな、と感じる。


4位 岐阜県立岐阜農林高等学校『Is(あいす)』
諸事情でモニター鑑賞になってしまったが、それでも楽しませてくれた。
舞台が自分たちの学校であるから演じやすかったのだろうなと感じた。農林高校という、高校生でありながら既に仕事の一部をしてる負い目と、他の高校生のように部活で青春をしたいのだという欲望とは、彼らだからこそできたのであろう。
ここは特に舞台美術が良くて、別に豪華というわけではないけれどちゃんと運転席があって動く小型トラックや、ボールはないのにシュートする度にネットが動くバスケットゴールなど、ちょこっちょこっとしたところで「おぉっ!」と視覚的に驚きをもたらしてくれた。バスケに関してはSEも上手く合わせていたので、無いボールがきちんと動きも見えてくるという演出だった。
照明は若干苦労していたかなぁ…という印象はあったが。

中盤での葛藤と、終盤の明るい未来にほっこりさせられた。現実でも明るい未来でありますように。


5位 北海道清水高等学校『その時を』
田舎の高校に転校してきた可愛い女子の謎が解けなかったのは、自分が途中ぼぉーっとしてしまったせいかもしれないので、そこは割愛するとして…
素舞台ではあるが人数が少ないので思い切ったことはできないけれど、田舎あるあるを少ない人数でリアルに表現したからこその楽しさじゃないかな、と。
転校生にときめく男子たち、全然女子扱いされない唯一の女子、そして可愛い転校生の女子。 ありきたりといえばそうなるけれど、みんなビジュアル面で適役だったのでそれも楽しんだ要素の一つではある。


6位 徳島県立阿波等学校『2016』
30年前(奇しくも自分の生まれた年!!)から2016年を見つめる話。ヤンキーにスケバンに、科学オタクにジージャン着てバンド組んでる野郎に、真面目だけれどもちょっと不良とつるみたい女の子…という見事にその懐かしさが髪型や服装やらで視覚的に充分楽しませてくれた。
ここは舞台セットが観た中では一番豪華だったので学校の裏庭というのがきちんと作り込まれていたのは単純にすげぇ~!とはなった。
ハケるところに潰した段ボールが積み重なっていて、そこでちょっと滑りそうになっていたのにはヒヤッとさせられたが。
そういや服が蛍光でしかも点灯してたりして、どんだけお金使ったのだろう…とも気にはなった。

昔の人が描く希望ある未来像というのは、現実を生きている身としてはひどくバカバカしかったりするが、それを本当に皮肉っぽく明るく大袈裟に体現していて、現代に居る我々にとっては切なくはなるけれど、面白いなぁと感じた。
もう少し突き詰めていけばよりハッとさせられた気もしたけれど、今考えるとああいう何も示さない終わり方は現実見てるとその通りなのかも…とも。
思う希望がはっきりとは無い、という視点もまたありなのかな。


7位 広島市立沼田高等学校『そらふね』
今回広島の二校はどちらも原爆をテーマとした作品だった。確かに8月6日は広島にとって忘れてはならない日ではあるし、会場も原爆ドームに近いのでそれをやることに意義はあるだろう。
ただ、じゃあ広島ってそれをテーマにした演劇しかやれないの?…と思ってしまうのも本音ではあるので、ここは非常に難しいところだなと感じた。

それはともかく、広島二校の内こちらを7位にしたのは、姉妹が読む本を劇中劇としてやってたのが、暗い話の中で一番楽しく思えたから。内容は子ども向けなので幼いものではあるけれど、希望がちゃんと見えて素直に良いと思ったからだ。姉妹が途中ぎくしゃくしてしまうが、亡くなった母親が話してくれたこの劇中劇として表現したおはなしがあるからこそ仲がまた戻ったのである。
劇中劇だけでも幼い子どもに見せてもいいなぁ、と思った。

マイナス点を挙げるとしたら、序盤の近所のおばさんと姉妹のやりとりが、核心となるまでやや長く感じたこと。60分もたすには仕方ないかもしれないが、無駄にも思えてしまった。


8位 埼玉県立芸術総合高等学校『解体されゆくアントニ・レーモンド建築 旧体育館の話』

今回観た中では一番内容が難解であっただろうと思う。もうタイトルと紹介写真からタダモノではないように感じたけれど、幕が上がった瞬間、白い服を身にまとった女の子たち、左に積みあがっている黒い椅子からもうそれは間違いないと感じた。

最初は抽象的な言葉をただただ発するだけだったが、話のベースラインは実はそれほど難しくはなかった気はする。それでも難解と思ってしまったのはそれぞれの名前が「奔放」だの「哲学」だの「癇癪」だのであることからもそうだし、難解じゃない話に抽象的な言葉をどんどん、そして淡々とぶつけていくからだったからであろうと思われる。

何より、先ほど述べた白い服、そしてバレエのようなしなやかな動き、椅子を一つ置く動作や配置がもうそりゃ美しかったのでそれに最大限に目を奪われた。
「意味は理解していないけれど、う、美しい…」と眺めてしまう抽象画そのもの。眠気を誘いうつらうつらさせてしまうのもまた演出なのかもと思ってしまうくらいだった。
女子だけ、というのは本当に奇妙に思える。でも、これ、高校生なんだよな、と思うとそれまた感嘆もしてしまう。


9位 北海道北見北斗高等学校『常呂から』
衝撃を突き付けた伊東高校の後だから印象が薄れてしまうというのもあるけれど、真摯に演劇やってたという印象はちゃんと残っている。
設定の時代が時代だけに憧れる芸能人の名前やら流れるヒットソングやらちょっとしたネタ(?)やらに、僕ですらあまりピンとこなかったけれどそれよりも若い高校生たちはどれだけ笑えたのであろうかは気になったところではある。
あと、カーリングを広めたというフィクション、とのことだが、広まったというところまではいかなかったので消化不良な点はあるが、まあ、作品の内容なのでそこはおいといて… 

家のセットからただ白い布をピンと張ってカーリングの氷に見立てたのは、派手でないものの綺麗に見えたし本当に氷が張ってるように見えた。更に言えば雪かきスコップがちゃんと地面に刺さるちょっとした仕掛けも用意していた。こんなものでも北海道を表せるんだなぁ…と感動を憶えたくらいであった。


10位 広島市立舟入高等学校『八月の青い蝶』
何も題材が悪いわけでもこの作品が悪いわけでもなく。7位でも述べたがこう広島二校ともが原爆をテーマとしてしまうと実に複雑な気持ちになってしまうのだよなぁ、というのが率直な感想である。
沼田高校のに比べるとこちらはかなり重い話である。そして、救いがない。
死に際の男が原爆が落ちた日に助けられなかった女の子のことを思い出すのだが、その落ちた瞬間のピカッと黄色に鮮やかに光る照明と、その後の焼け野原がもう観客の気分を落とすには十分な演出だったなと思った。

原爆が落ちる前の青い蝶、あれは本当に綺麗だったな、と。もしかしたらあれがわずかながらの希望と夢だったのかもしれない。それさえ摘み取る原爆。もう、それは後世、永遠にあってはいけないものなのである。それだけは強く強く感じさせてくれた。

10位としたけれど、相対的な順位なのでただの気分の問題である。


番外1 和歌山県立串本古座高等学校『扉は開く』
3日目はなんと二人芝居、一人芝居だと知り、「嗚呼、これはどういう評価であれ観ておきたかった…」と後々後悔してしまったが、遅すぎた。
串本高校は二人芝居。キャラの違いが明確に映る二人だけのやり取り、どうやらエレベーター内での出来事とのことで時間も空間も狭いわけだけれどその濃密なやり取りを観ておきたかったな、と感じる。
舞台上のお互いがお互いを助け、時に戦う二人芝居。大きな舞台でそれを大いに力を発揮したのであろう。


番外2 山梨県立白根高等学校『双眼鏡』
一人芝居というのはAPOFES(詳しくはAPOFES 2015の個人的順位付けとかAPOFES 2016の個人的順位付けとかをどうぞ)で存分に観てきたけれど、同条件で大きな舞台、そして高校生で、というのは結構な勇気と根気だったのじゃないだろうか。
舞台美術に関してはその大きな舞台にそぐうような豪華なセットだったそうで、そこは飽きることなく見せてくれたのだと思う。
この作品は引きこもりの少女のお話しだそうで、決して明るいわけではなさそうに思える。ある程度妥協を覚えた我々大人よりは当事者である高校生がこの一人芝居をどう感じたかが一番気になって仕方がない。

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2015年の分もまとめて書こうとしたけれど、2016年の感想で労力を使ってしまったのと、更に時間かかりそうなので、この辺にしとく。
2015年の分は記憶が薄れぬ内に書きたいところだけれど1年経った今、twilogとプログラムを見てやっと思い出せるレベルなので、もしかしたら書かない可能性もある。

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去年、今年と高校演劇を観て、そこまで人生やり直したいと思ったことがないのに、本気でやり直したくて仕方がなくなってしまった。
昨晩、人生の決断を聞かれる場面があって、確かに今までなぁなぁでしか生きてこなかったのでギクッとして結局答えられなかったのだけれど、もうそこまでなぁなぁに出来ないのかもしれないとついに思ってしまったのであった。

今回大会に出た君らにはまだ希望がたくさんある。出れなかった人たちにだって希望はたくさんある。

自分は…あると信じよう。いや、あるんだ。