AIR-J'史

映画と映画祭と映画館と演劇とじゃがりこと旅行とライブが好きな札幌生まれのAIR-J'の記録

キスの味の思い出はいちごよりもラー油だ

意味不明なタイトルをつけてみた。

これから映画のネタバレをするので観た人・気にしない人だけ続きをどうぞ。

ゲイ映画のお気に入りのシーン三選

『THE DEPTHS』(濱口竜介監督)


THE DEPTHS 予告編

送迎ドライバーであり恋人である男が車の中でハンバーガーを食べて待っていて、仕事から戻ってきた男娼のリュウが男にキスをしてその後に放った言葉

「マックの味がする(笑)」

いや、別にすごい名言でもなんでもない、よ?
でも、ジャンクフード食べた口にキスするなんてまず親しい人にしかできないし、その放った言葉に恋人への愛しさが内包されていて観た瞬間ゾクゾクっときたシーンだった。

そう、甘いガムを噛んだ後の爽やかな吐息のするキスより、二人で餃子食べた後に新宿バルト9へ向かうエレベーターの中で不意にされたキスの時に味わったギトギトのラー油の残り香のほうが印象深くて愛しさが倍増するのだ。
(あ、これは個人的な感想すぎて共感されなさそう。まあいいや)

ちなみにこの映画自体のセクシャルマイノリティの描き方はやや古さや物足りなさを感じたが、このシーンのこの言葉だけは本当に気に入ってる。

REC(ソ・ジュンムン監督)


퀴어멜로 'REC 알이씨' 특별 예고편!

2013年に開催された『第4回アジアンクィア映画祭』で観た短編の中の一つ。

付き合って5年の記念日にモーテルでビデオを撮影、まあいわゆるハメ撮りなんかもしちゃうんだけれど、セックスに至るまでの親し気な会話やふざけ合いは、変に演出するセックスシーンよりも非常に好感が持てる。
だって、セックスって笑える行為でしょ?アヘアへ喘いでたらお互い笑うでしょ?
(真剣にセックスに挑んでる人がいたらそれは申し訳ない)

さて、この映画で気に入ったのは、体つきに対して言及するシーン。もうそれなりにいい歳なのでちょっとお腹の肉がついてるね~みたいな発言をし合う。
BLチックだと割といい身体つきをした役者が挑むけれど、この肉のたるみが何故かリアルなカップルに見えてきて微笑ましかった。

そういえばananで裸を披露してその腹のたるみで世間をがっかりさせた向井理
きいろいゾウ』でも隠すことなく裸を見せて、やはりたるみを隠さなかった姿に僕は逆に感心して好感を持ってしまった。

今のイケメン俳優は身体つきが良すぎる。いや、映えるのに充分だから鍛えてるならば鍛えて全然構わないのだが、彼のような自然体(?)なイケメン俳優が数人いてもいいのではないだろうか。と、僕は思う。

『ムーンライト』(バリー・ジェンキンズ監督)


アカデミー賞作品賞!『ムーンライト』日本版オリジナル予告

去年のアカデミー賞作品賞を受賞したから有名なはずの映画。

気に入ったのは、主人公が友人に浜辺でしごかれてイっちゃって、たぶん手に精液がついたのか、それを砂で拭うシーン。
モノは見えなくても、甘美なシーンである。

そして、再会した二人が寄り添うシーンでラストを迎えるのも最高だ。

何が言いたいかというと、特に"ゲイ"とは言及せず、ゲイ的感情なのか友情という感情なのか曖昧にしていて、そして直接的なセックスシーンを描いていないところだ。
2013年にパルム・ドールを受賞したレズビアン映画『アデル、ブルーは熱い色』では10分以上のセックスシーンが話題となったが、セクシャルマイノリティ映画とジャンル分けされるものは何故かセックスシーンを入れたがる。

セックスという描写は分かりやすいというのもある。そして、ゲイ映画においては男というのもあって男女のそれと同等な感じで、チンコを挿入するシーンを描きがちだ。
でも、別にそれだけが全てではないでしょ?
キスだって別にしなくたって添い寝だけでも十分に愛は感じられる。
(ムラムラするから添い寝で治まらないという性欲爆発マンの意見はこの際無視)

セクシャルマイノリティ描写について

LGBTブームだなんだってわけではないだろうけれど、最近は割とアップデートされてきていると思う。
映画『怒り』で出てきたハッテン場、病室で母親が起きるまで暇つぶしとして利用していた出会い系アプリ(あの仕様はJack'dっぽい)、女装とかしてなくても友人たちとの会話の中ではついつい出てきちゃうオネエ言葉(妻夫木聡扮する優馬だけはオネエ言葉じゃないところもある種リアル)。細かいアイテムが当事者の現状に寄せていたなとつい唸ってしまった。

とはいえ、フィクションの世界ではドラマ性を持たせるために観客の分かりやすさはある程度求められる。

  • トランスジェンダー
  • 禁断の恋(許されぬ恋、隠す愛etc.)
  • アートなゲイ
  • それなりの収入がある
  • セックスありき

4つ目に関しては、『怒り』の優馬も、ドラマ『隣の家族は青く見える』のわたるんもなんかいい部屋に住んでいる。
でも、非正規の人だって知り合いにそれなりにいる。
3つ目に関しても才能溢れるのがセクシャルマイノリティ、みたいな感じだけれど凡人なんかもうそりゃ多いわけで、どうも可視化されていない。

2つ目に関しては、まるで悲愴感漂うような生き方のようになってる部分あるけれど、実際は『ファーストクラス』かのごとくくだらないマウンティングとすさまじいヒエラルキーにまみれてたりする。

ゲイだけがセクマイではない

”L"にあたるレズビアン描写に関しては先にちょこっと挙げた『アデル、ブルーは熱い色』や『キャロル』が話題になったから世間的にも知られるようにはなってるけれどゲイ描写に比べたら少ないほうではある気がする。
また、『ファーストクラス』状態なビアンもいると耳にするので、そういうのも可視化されたらいいな、と思う。

LやGからは半ば迫害気味と言われる”B”や、”Q”だの”X”だの、世間ではまだ認知されにくいものは、アート的な映画ではそこそこ描ける部分はあるが、視聴者が比較的ライトに見るドラマではまだまだだろうし、自身も知識に乏しい面があるのでこちらに関しては言及を避ける。
ただし、多様な世界がいつかライトに観られる日がくればいいなとは願っている。